「エルマー・ガントリー」を読む2017年01月23日

 昨年、アメリカのフォークシンガー、ボブ・ディランがノーベル文学賞となって話題になった。ボブ・ディランはアメリカ人として10人目の受賞者で、最初にノーベル文学賞を受けた作家はシンクレア・ルイスで1930年のことだ。
 シンクレア・ルイスの小説で一番広く読まれたのは「エルマー・ガントリー」だろう。1960年にバート・ランカスター、ジーン・シモンズで映画化された。私は1963年頃に東京の五反田の名画座で観ている。
アメリカ歴代ノーベル文学賞受賞者
 1930年 シンクレア・ルイス
 1936年 ユージン・オニール
 1938年 パール・S・バック
 1949年 ウィリアム・フォークナー
 1954年 アーネスト・ヘミングウェイ
 1962年 ジョン・スタインベック
 1976年 ソール・ベロー
 1978年 アイザック・バシェヴィス・シンガー
 1993年 トニ・モリソン
 2016年 ボブ・ディラン
 キリスト教(いろいろの宗派があるが)の伝道師の話で、バート・ランカスターはこの映画でアカデミー主演男優賞をとっているから、たまにテレビで放映されることがある。
  10数年前、この映画の原作(日本では既に絶版)を読んでみようと、5,000円近い金を出して文庫本の古書で買ったものの、20数ページほど読んで退屈して放っておいた。
 昨年の暮、このまま放おっておくのも無駄だからと決心をして読み出した。
 映画と同じストーリーに入るのは、原作本の上巻の2/3ほど読み進んだあたりからだ。それまで学生だったエルマー・ガントリーの「酒好き、女好きの成長?」に延々と付き合わされる。
 映画の終わりは原作本では上巻の終わりのところだ。
 布教の舞台だったテントの焼け跡から去るとき、エルマー・ガントリー役のバート・ランカスターがこう言う。
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 When I was a child, I understood as a child and spake as a child. When I became a man, I put away childish things.
『子供の時は子供らしく物事を理解した。大人になった時―子供らしいものは捨てた』(映画字幕より)
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 新約聖書の「コリント人への第一の手紙 第13章」だそうだ。
 このセリフは原作にはない。
 映画の脚色が素晴らしかったのだ。脚本、監督はリチャード・ブルックス。こんな退屈な原作を面白い映画に仕立て上げた手腕は見事だ。
 
 下巻は、破滅的な事故に会ってもエルマー・ガントリーは伝道師の仕事を続け、スキャンダラスなことがあったりする。上巻の2/3を辛抱して読んだおかげで下巻は楽しく読み進める。
 ところが下巻の80ページまで読み進んだところ、そこからストーリーがおかしい。80ページの次が113ページになって128ページまで続くが、そこから97ページになり最後まで続く。つまり81ページから96ページがないのだ。この本は落丁と乱丁だったのだ。
 本の奥付には「落丁・乱丁本はお取替えいたします」と書いてあるものの、この角川文庫のエルマー・ガントリー下巻は1965(昭和40)年のものだ。角川に在庫はないだろう。
 気になるから図書館で1940(昭和15)年に発行された「妖聖ガントリー」の復刻本を借りてきた。
 前田河広一郎の訳文はいいと思うが、抜けた章、省略した部分があり完全版ではない。それでも角川文庫の落丁したあたりのストーリーは追えた。
「エルマー・ガントリー」は絶版になって久しく、今後、新刊が出ることもないだろう。ここに詳細な粗筋を書こうと思っていたが、その気がなくなった。読み終わったから捨ててしまおう。
 ノーベル文学賞の作家の本はどれも面白くないものだと私は思っている。「エルマー・ガントリー」は映画だったからよかったのだ。
 映画のこの場面がよかったから原作を読んでみようと思ったのだが、原作にはなかった。
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布教テントの掃除人「演説を聞いたよ」
エルマー・ガントリー「どうだったかね?」
掃除人「今まで5回、回心したよ。サンデー、ビダウルフ、スミス師の力で。シャロンは2回だ。酔っ払っては救ってもらう。酔っ払うのも救われるのもいい気分だよ。お休み」
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 映画評論家の町山智浩が「エルマー・ガントリー 魅せられた男」を語る、としてYouTubeにあって詳しい説明をしていて面白かった。今は削除されて見られないのは残念。

コメント

_ pinewood ― 2017年09月05日 05:57

スターチャンネルで観ました。バート・ランカスターが嵌り役でじた。シンクレア・ルイスの原作は読んでいませんが、ノーベル文学賞作家の作品がつまらないと言う事は有り得ますね。

_ エルマー・ガントリー 悠悠炊事 ― 2017年09月05日 10:06

この映画を観ると、原作を読んでみたくなるのですが、退屈でした。だからか、今になっても、再版されるとか、新訳で出るとかはないですね。

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