「痴人の愛」の校正 谷崎潤一郎全集 没後版(その22)2017年04月17日

 2月に、青空文庫の工作員になって「痴人の愛」の校正をした。その校正の方法を説明しておこう。
 校正のリファレンス(基準となるもの)データとして、私が持っている「新潮文庫の100冊」のテキストデータを使ったのである。
「新潮文庫の100冊」は1995年に電子本の先駆けとして発行されたもので、この中に「痴人の愛」が入っている。そのテキストデータをコピーされないようにプロテクトがかかっているものの、その解除法を考えた人がいて、解除ソフトがネットで得られた。(今から18年前の話です)
 今から18年前、そのソフトを使い MS-DOS 上で操作をして、100冊のデータの全てを普通のテキストデータ(拡張子が.TXT)として取り出した。ただし、本文中のふりがなは、後での処理が面倒であるから取り出さなかった。
 これで理解いただけると思うが、この「痴人の愛」のテキストと、青空文庫から送られてきた入力者の誰かが入れ込んだ「痴人の愛」テキストとを突き合わせれば校正が容易にできる。
 テキストの比較を行うソフトが、ネット上で公開されていて、誰にも簡単に使える「テキスト比較ツール difff《デュフフ》」だ。
 1995年12月発行のもの。価格は 15,450円、当時の消費税は3%だった。
 左のテキストボックスにCD-ROM版からの「痴人の愛」のテキスト文をペースト、右のボックスに青空文庫からの「痴人の愛」のテキストデータをペーストして、「比較する」ボタンを押すと、しばらくして、比較結果が以下のように出てくる。
 左右の異なる文字が水色の背景色で表示される。
 私のリファレンスデータには、ふりがながないから、殊《こと》に、というように青空文庫側のデータに違いが出てくる。
 青空文庫の入力者は、「痴人の愛」の冒頭の文章をいきなり改行してしまったから、リファレンスとはズレが生じているのが分かる。
 また、
参考資料なるに違いない
参考資料なるに違いない
 のように、「と」と「に」が違っているのが分かる。
 ここで、福岡市図書館から借りてきた新潮文庫の底本「痴人の愛」のページを見て、私のリファレンスが正しいことを確認して、青空文庫側のテキスト文を訂正する。
 改行の違いについては、文庫本だけでは判断ができないため、谷崎潤一郎全集第十巻(没後版)のページを見て確かめた。
――まあ云って見れば、
――まあ云って見れば、
のダッシュの違いは、青空文庫側が正しい。
 というわけで、見やすく、簡単に違いが分り修正できた。

 結果、訂正箇所は71あった。リファレンス側にも4つあった。
 しかし、きょう、再度、difff でチェックしてみたところ、見落とした訂正箇所がいくつも見つかった。私が注意力散漫であるからして、この方法を使っても、完璧にはいかない。
 ふりがな(ルビ)と傍点箇所のチェックは目で見てやらなければならず、ふりがなは2,826箇所、傍点の箇所は488あり、うんざりした。「まアちゃん◆◆◆◆」がしょっちゅう出てきて、この野郎は本当に嫌いになった。
 今回の「痴人の愛」の校正は技術的興味でやってみたもので、校正の作業は最初で最後のつもりだ。今後、やることはないだろう。

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