クロイドン発12時30分2017年05月19日

「クロイドン発12時30分」のタイトルに惹かれて読んでみた。イギリスの推理作家フリーマン・ウィルス・クロフツが1934年に書いた小説だ。
 クロイドン発の12時30分とはパリ行きの飛行機の出発時刻だ。この当時、ロンドンの南のクロイドン(Croydon)に国際空港があって、1959年ぐらいまでは使われていたが、その後、ロンドンの西のヒースロー空港、クロイドンよりさらに南のガトウィック空港に分かれた。
ご参考→HISTORIC CROYDON AIRPORT LONDON
 私の40年前の仕事場が、1934年当時でいうクロイドン空港内の北側の端っこだった。私はクロイドンの街に3年ほど住んでいたから、その地名を聞いたり見たりすると懐かしく思うからだ。
 クロフツだけではなく、アガサ・クリスティのポアロシリーズの一つ、1935年の「雲をつかむ死」でもクロイドン空港が出てくると聞いたが、それは読んでいない。
 クロフツは推理小説界では有名な作家なのだが、その本を読むのは初めてだ。「クロイドン発12時30分」は、倒叙とうじょ推理小説の傑作なのだそうだ。倒叙とは、最初から犯人が分かっていて物語られる。読者の楽しみは、犯人と一緒になって、どういう手段と方法で殺すのか、その犯行の過程、犯行が成功すれば、そのまま終わりのわけはないから、どのようなことで疑われて犯行がバレるかを時系列で追えるからだろう。
 電機モーターを製造する会社の社長は会社の倒産が間近に迫り、金を必要としていた。いろいろ金策をしたが方策が尽きる。伯父の遺言で多額の遺産相続ができるからと、伯父を殺害する計画をたてる。伯父の飲む消化薬の1粒に青酸カリを仕込む。伯父がそれを飲んだのは、クロイドン発12時30分のパリ行きの機上で機内食を食べ終えた後だった。フランスに着くと、すでに死んでいた。
 小説としての舞台はロンドンの北のヨークであるから、クロイドンが出てくるのは飛行機に乗る時だけだ。
 今の時代から読むと、ありきたりの筋立てだ。それはそれで、犯罪の動機は現代でも同じだろうから、犯人の心理が分り、同情心が起きてくる。意外と楽しめる小説だった。図書館から借りてきたが、たまたま新訳で訳者の加賀山卓朗は読みやすい。
(「クロイドン発12時30分」は大久保康雄が1956年に訳しているがそれでなくてよかった)

コメント

_ 小説を殆ど読まない信二なのに ― 2017年05月19日 11:25

以前申したように殆ど小説を読まない私なれど、何たる偶然か。この小説あろうことか買って読んだ記憶あり。毒入り錠剤の表面に光沢を出すために銅板の上で作る云々。つまらぬことは記憶にありますが、肝心の筋と結末はサッパリ記憶に有りません。破産の恐れからの犯罪だったのですね。我が身内にも破産者がいてその悲惨さを知ってる為、私は起業する勇気がありませんでした。

_ 殺人の後 悠悠炊事 ― 2017年05月19日 14:39

ほう、珍しいですね。こんな昔の小説をどんな人が読むやらと思っていましたが…。出版会社がうまい宣伝をしていたのでしょうか?
犯人のチャールズは起業したのではなく親の跡継ぎでした。だから経営に気合が入っていなかったのでしょう。
伯父の執事のウェザラップに毒入りの薬瓶を入れ替えるところを見られていて、ウェザラップから強請られる。
それでウェザラップを殺し、主人の金を盗み失踪したかのように見せかけるが、湖に捨てた死体は警察によって引き上げられ、しばらくして逮捕される。裁判は長々として退屈。決めては、変装して他人になりすまし青酸カリを買ったのが、薬局の主人に面通しでバレてしまったことです。ウェザラップを殺しの隠蔽もずさんだった。
陪審員はチャールズを有罪として終わりです。
最後に捜査した刑事らが集まっての座談会があり、どこが決めてであったかを話しているところがラストです。
第二次大戦前で、二人殺したので当然死刑でしょう。イギリス国内最後の死刑執行は1964年8月13日だったそうですから。

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