吉村昭の小説はいいね2017年07月24日

 6月に憧れの網走監獄博物館へ行ったから、吉村昭の1977年の小説「赤い人」を読み直した。この文庫本は博物館内の売店で「破獄」とともに販売されていた。
 北海道の監獄史、囚人による開拓の歴史を淡々と綴っていく本である。私はこう思う、私はこう考えたと、作家がしゃしゃり出て来るような書き方をしないのが吉村昭のスタイルだが、読んでいくうちに、そのスタイルであるからこその主張が分かってくる。
 罪咎を受けた囚人は監獄に入られ、冬は極寒の北海道に送られる。使役させることが目的だから死刑囚はいない。だから刑場はない。しかし、寒さと栄養不足でどんどん死んでいく。脱走して捕まりそうになって反抗すると看守のサーベルで斬り殺される。明治14年の雪解けの頃には、「収禁中の囚人285、現在までの病死88、斬殺2」とある。こんな時代に生れてなくてよかった。
 標茶にも集治監があり、川湯の硫黄山で硫黄の採掘で囚人が働かされていたのを読み直してみて知った。

 私は監獄ものは大好きだが、漂流ものも大好きだ。吉村昭は1976年に「漂流」というサバイバル小説を書いている。これは図書館から借りてきて読んでみた。江戸時代、難破した商船が土佐から鳥島に漂着し、舵取りの長平はそこでアルバトロス(日本名:アホウドリ)を食べ、天水を飲み、13年生き延びて故郷に戻る話だ。
 単調な話だろうと思ったが、さにあらず、どんどん先に先にと読み進み、数日で読み終えた。いいストーリー構成をしている。
 長平は3名で鳥島に漂着したが、2名は2年内に死亡、3年目に大阪の商船が漂着し仲間が増え、さらに6年目に薩摩の商船が漂着する。島を脱出するべく舟を作り、総員14名が青ケ島経由で八丈島にたどり着く。読むだけの私も涙が出てくるよ。


 生命の源になったのは鳥島のアルバトロス。吉村昭の著述では、たいそうおいしいと書いてある。私も食べたくなったが、実現不可能であろう。
 鳥島は行ったこともないし行けもしないから、私はアルバトロスが生息しているガラパゴス諸島の島をイメージして「漂流」を読んだ。
アルバトロスを初めて間近に見たのはエクアドルのガラパゴス諸島のエスパニョーラ島。(1994年)