蘿洞先生 谷崎潤一郎全集 没後版(その8)2015年07月17日

 久しぶりに昼時の博多駅に行ったので、博多シティの8階にある丸善へ寄った。決定版の谷崎潤一郎全集を手にとって見たかったからだ。
 すでに1巻、19巻、20巻が発売されている。目立たぬ場所にその3冊が置いてあり、第19巻の「細雪」上中を手にとった。
 没後版を読んでいる私には小さく軽い。函入りだがパラフィン紙がないので取り出しやすい。しばしページをパラパラとめくり本文を眺め、奥付を見た。そしてすぐに函に収め棚に戻した。
 6,264円するが、普通の本だ。
 中古本で没後版全集を買ったのは私にとって最良の選択だった。
 
 中央公論新社のホームページに谷崎潤一郎メモリアルイヤーとして特集ページがある。その出し物の一つに「マンガアイソロジー谷崎万華鏡」がある。すでに3作家のマンガが公開されているが、現在公開中の中村明日美子のものが面白かった。
 タイトルは「続続蘿洞先生」。蘿洞は“らどう”と読む。
 このマンガで興味を惹かれ、没後版全集では第10巻にある「蘿洞先生」、第11巻にある「続蘿洞先生」をすぐに読んでみた。それぞれ短編である。全集が全巻あるのはいいことだと思った。
↑決定版 谷崎潤一郎全集(中央公論新社PDFパンフより)
「蘿洞先生」(大正14年)
 A雑誌の記者は大学教授の蘿洞先生の宅を訪れ、45歳ぐらいながら独身主義で変わりものの先生から話を引き出そうとする。話は発展することなく(蒟蒻問答)、記者は先生宅を退出する。家の周りを観察しているときに、裏の井戸端に女中であろう小娘を見かけ、そーっと裏庭に入り込み、先生の書斎を覗く。そして、その娘とのマゾ的な遊びに耽る先生の姿を目撃してしまう。
谷崎潤一郎 羅堂先生

「続蘿洞先生」(昭和3年)
 数年後、記者は大学教授を辞めた蘿洞先生と浅草の劇場でばったり会う。先生は一座の中の、話さず素足を出さない女優に関心を持っており、記者に調査を依頼する。その女優は“鼻ふが”で、足の指が1、2本ないのが分かってくる。その後、先生からの音沙汰がなく記者は先生宅へ訪ねるものの門前払いを喰わされる。やむなく、この前に覗き見をしたときの小娘(まだ奉公していた)を買収し話を聴く。先生はその女優と結婚し、家では奉公人を寄せ付けず部屋に二人で篭っているという。またしても記者は裏庭から忍び込み部屋を覗きこんだ。記者は、妻になった女優に足の指の義肢をはめている先生の姿を見、女優の“鼻ふが”の声を初めて聴いた。
谷崎潤一郎 続羅堂先生

 谷崎は「続蘿洞先生」の続きは書いていないので、マンガとして「続蘿洞先生」の続きを創作したのはいいアイデアだ。

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